
Q.父(成年被後見人)が先日亡くなりました。遺言書では長男である私に自宅の土地建物を相続させるとあったのですが,生前に父が老人ホームへ入居する際,自宅は売却されていました。このような遺言はどうなるのでしょうか?
A.遺言者は,いつでも自由に遺言を撤回できます。従って,一旦作成した遺言を取り消して異なる遺言を作ることができます。また,今回の事例のように,遺言で決めた内容と異なる財産の処分行為も自由にできるのが原則です。
遺言が遺言後の生前処分その他の法律行為と抵触する場合には,抵触する部分について遺言は撤回されたものとみなされます(民法1023条2項)。「自宅の土地建物を長男に相続させる」という遺言内容と,生前に自宅を売却するという行為は抵触するものですので,「自宅の土地建物を長男に相続させる」という遺言内容は撤回されたことになります。
今回の事例では,成年後見人による生前の売却行為という点が特異ではあります。しかし,成年後見人は,家庭裁判所の許可を得て成年被後見人の居住用不動産の処分することもできます(民法859条の3)。例えば,老人ホームに入居する費用捻出のため不要となる自宅を売却するのが適当と言える事案であれば,裁判所の許可も下りる可能性が高いでしょう。従って,成年後見人が裁判所の許可を得た上で売却していた場合,自宅の土地建物の売却は有効であり,遺言は取り消されたことになります。
(平成28年1月19日中日新聞全尾張版「暮らしの法律相談」掲載,執筆担当:弁護士野村一磨)
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